タイルと釉薬について

タイルや陶器など、セラミック製品の大きな魅力のひとつといえば、釉薬(ゆうやく/うわぐすり)による、個性豊かで深みのある色彩表現でしょう。釉薬は、種類や組み合わせだけでなく、様々な条件で、豊かな表情を見せてくれます。今回は、そんな「釉薬」についての知識をご紹介したいと思います。

釉薬とは?

  • 施釉タイル

  • 無釉タイル

タイルの表面を覆うガラス質の被膜のことを「釉薬(ゆうやく/うわぐすり)」と言い、表面に釉薬を施されたタイルを「施釉タイル」、釉薬が施されていないタイルを「無釉タイル」と呼びます。

無釉タイルが素地そのものの色になるのに対して、施釉タイルは表面に施す「釉薬」がタイルの色を作ります。また、釉薬は色・ムラ・ツヤなど、光沢や味わいを出すほか、コーティングすることで吸水性を抑えたり、割れにくくしたり、汚れが付きにくくするといった「清掃性」にも優れた実用性を兼ね備えています。

釉薬は、何からできているの?

釉薬の成分は、主に以下のようになります。

「粘土(※)・長石」+「珪石(ガラス)」+「色の成分(顔料・金属酸化物)

※粘土の成分は、主に「アルミナ(接着成分)+ 長石 + シリカ(ガラスの素)」からできています。

釉薬と素地粘土の成分が似ているので、上手く一体化できるのですね。

釉薬には、どんな種類があるの?

釉薬には様々な種類があり、区分の仕方もそれぞれです。材料名や性質、燃焼方法や温度によってなど、様々な区分方法があります。以下の区分に限らず、いくつかの釉薬を組み合わせたり、調合の具合により、全く違う、バリエーション豊かな釉薬が作られています。

  • ガラス釉

    ガラスの粉の入った釉薬。低温で溶けるため、鮮やかな色が出せる。

  • 透明釉

    無色透明に仕上がる。素地とよく馴染み、下地が透けて見える。

  • 貫入釉

    ガラス釉の中でも貫入が入ったもの。

    ※貫入(かんにゅう):素地と釉(うわぐすり)の膨張率の差によって、釉に細かいヒビが入った状態。

  • マット釉

    溶けきれない結晶によって、マットで不透明になる。

  • ブライト釉

    光沢のある釉薬。

  • 窯変釉

    釉薬の成分が非晶質の状態で、窯の温度によって変化したもの。

  • ラスター釉

    光彩の光ある釉薬。

  • 結晶釉

    結晶がはっきり目視できる釉薬。

釉薬の掛ける回数や面状での表情の違い

同じ釉薬を使った場合でも、施釉の方法・条件の違いで、仕上がりは大きく変わります。

■ 種類の異なる釉薬を重ねた場合

  • 1度掛け

  • 2度掛け

  • 3度掛け


■ 同じ釉薬を凸面に施した場合

  • フラット面

  • 凹面

    少し色の濃い部分が凹みになっている。更に濃い部分は、より深い凹みになっている。


■ 同じ釉薬を凹面に施した場合

  • フラット面

  • 凸面

    釉薬が流れて、凸部分の下地の色が透けて見える。

釉薬は、どのように作られているの?

釉薬の調合はとても繊細な作業です。希望通りの色を作ることは大変難しく、何度も微調整を行いながら決定していきます。

■ サンプル制作の場合

まずは少量で。

原料を計ります。

ボールミルにアルミナの玉と水を入れます。

半日かけてミルを回転させることで、球の摩擦により細かく粉砕して、比重の違う水と鉱物を馴染ませます。

釉薬の完成。

スプレーで吹き付けるなどして、施釉します。

■ 荷口生産の場合

まずは少量で。

原料を計ります。

ボールミルにアルミナの玉と水を入れます。

半日かけてミルを回転させることで、球の摩擦により細かく粉砕して、比重の違う水と鉱物を馴染ませます。

釉薬の完成。

スプレーで吹き付けるなどして、施釉します。

まとめ

いかがでしたか? 釉薬は、その種類の組み合わせだけでなく、素地の面状との相性や焼成温度、成分による化学変化の偶然の効果などで、その色の表情は無限に広がります。

タイルの色・ムラ・表情を眺めながら、どんなふうに作られているか想像すると、タイルを見る愉しみが更に増しますね。是非、あなたのお気に入りのタイルを探してみてください。

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