制作レポート:「瀬戸風景2022 (川田知志 作)」

エクシィズでは今春より、フレスコ画家・川田知志さんの作品制作への協力をさせていただきました。

今回、川田さんは、愛知県陶磁美術館にて開催中の特別展『ホモ・ファーベルの断片』への参加にあたり、自身初の試みとなる陶壁の制作を企画していました。そこで地元のタイルメーカーとして、制作場所の提供や、絵付技法のアドバイスなど、川田さんの挑戦をサポートすることとなりました。

今回は、その川田さんの陶壁作品「瀬戸風景2022」の制作に密着し、その様子をご紹介いたします。

フレスコ画家・川田さんの、陶壁作品への挑戦

川田さんは、フレスコ画を得意とするアーティストで、これまでに様々なフレスコ壁画を手掛けていらっしゃいます。

「フレスコ画」とは、壁に塗った漆喰が生乾きのうちに、水で溶いた顔料で絵画を描いていく手法で、イタリア・ルネサンス期の教会壁画などによく見られます。強く明るい発色と、抜群の耐久性が特徴ですが、やり直しが効かず、熟練した高い技術が求めらます。川田さんは、国内では数少ないフレスコ画家のひとりです。

今回、川田さんは、やきものの産地「瀬戸」の風景を描くにあたって、地場産業と密接に関係する「陶壁」という表現媒体に注目したそうです。これまでに経験の無い表現手法での作品制作のために、入念なリサーチを重ねる中でご縁があり、川田さんの作品制作を、弊社が協力することとなりました。

川田 知志 (かわた さとし)

1987年、大阪府生まれ。京都府在住。2013年、京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻(油画)を修了。大学でフレスコ画を学んだのち、銭湯や市役所などの様々な公共空間で制作、発表。都市近郊の均質化した景色をモチーフにしながら、現代社会を記憶する壁画を目指し活動している。2019年、平成30年度京都市芸術新人賞受賞。


主な出展歴:川田 知志

  • 「彼方からの手紙」ARTCOURT Gallery (大阪 / 2022)
  • 「Slow Culture」ギャラリー@KCUA (京都 / 2021)
  • 「SUBJECT/OBJECT」ANTEROOM allery 9.5 (京都 / 2020)
  • 「セレブレーション-日本ポーランド現代美術展-」 (京都, ポズナン, シュチェチン / 2019)
  • 「街と、その不確かな壁と...。」あまらぶアートラボ (兵庫 / 2019)
  • 「拆(倒)」A4 ART MUSEUM (中国 / 2018)

「いっちん技法」によるタイル絵付

「いっちん技法」は、ケーキに生クリームを絞るように、粘土を盛り付けて輪郭をかたどる、陶磁器の絵付けによく用いられる技法です。川田さんは、今回の陶壁制作の絵付けに、この「いっちん技法」をアレンジした表現を模索していらっしゃいました。釉薬の調合や色変化、カロリー計算、筆の選定など、弊社のこれまでのノウハウから、川田さんの求める表現に最適な方法をアドバイスさせていただきました。

「いっちん技法」では、通常、施釉後に粘土を盛り付けて輪郭を描くのですが、今回の制作では、施釉前にいっちん技法を施し、意図的に釉薬同士の混ざり合いを起こすことで、味わいのある表現を実現しています。このような表現はまさに、独自の表現を追求する、アーティストならではの発想ですね。

作品「瀬戸風景2022」

千年以上の歳月をかけて「やきものの街」として形づくられてきた瀬戸の風景を、公共空間の作品制作を数多く手掛ける、川田さんの感性で捉えた作品「瀬戸風景2022」。

瀬戸市にある愛知県陶磁美術館の敷地内から出土した登り窯を囲う「古窯館」の壁面に、瀬戸市の今の風景が描かれています。

「その土地の素材や歴史をリサーチし、現地の職人と協働した制作活動を通して、公共空間における壁画の役割やあり方を探りたい」という川田さんの想いと、登り窯が呼応し合うような、素晴らしい展示となっています。

まとめ

いかがでしたか?

川田さんの作品と制作活動を通して、多治見市の地場産業であるタイルの生産に携わる者として、タイル・陶器の街として発展してきた地元の風景と重ね合わせながら、色々と考えさせられました。タイルや陶器が街の至る所にあり、当たり前のように生活に密着しているこの風景が少し誇らしくなり、未来に残していきたい大切なものだと感じました。

また、アーティストの方が、表現を模索する中で「陶壁」に辿り着き、協働させていただいたことは、弊社にとっても意義深いものでした。アーティストの自由な発想が刺激となり、タイルの表現の可能性が広がれば何よりです。

川田さんの作品を通して、多くの方にタイルの魅力が伝われば、嬉しい限りです。

今回ご紹介した作品は、現在、愛知県陶磁美術館にてご覧いただけます!

今回ご紹介した、川田知志 作「瀬戸風景2022」は、愛知県陶磁美術館にて 7/16~10/2に開催中の特別展『ホモ・ファーベルの断片』にて展示中です。是非、ご来場いただき、作品を間近で見て体感してください。


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