意外と知らない「目地」のこと
タイルと密接な関係にある「目地」ですが、ただ単にタイルの隙間を埋めるだけのものではなく、明確な役割や意味があります。
今回は意外と知られていない、目地込みによって得られる効果や目地のパターン、目地幅の決め方についてご紹介いたします。
目地の役割
目地込みすることにより整然と配置されたタイルは、清潔感のある印象を受けます。目地材を使用せず、タイル同士を突きつけて施工する「ネムリ目地(眠り目地)」によるデザイン性も魅力的ですが、建築物の安全性と耐久性を維持し、より長くタイルを楽しむために、目地込みすることをお薦めしております。
目地込みを行うことでタイルや建築物を守るための様々な効果が得られます。安全かつ大切にタイルをご使用いただくために、その中でも特に重要な3つを紹介いたします。
役割その1:タイルの落下を防ぐ
目地の隙間から、貼り付け材(接着剤)が直射日光に晒される可能性があります。紫外線が当たり続けた接着剤は粘着力が劣化し、タイルが剥離する恐れがあります。接着剤の劣化によってタイルの剥離や落下による怪我や事故を防ぐために、目地込みによって予め危険を回避しておくが大切です。
役割その2:緩衝材
目地は、タイルの緩衝材としての役割も担っており、下地の収縮・膨張などの動きが直接タイルに伝わるのを和らげ、タイルの剥離や欠けを防いでいます。特に、地震が多発する日本では、目地込みによってタイルの落下を防ぐことが重要です。
役割その3:寸法誤差の調整
焼き物らしさを特徴とする湿式タイルは、焼成のにより収縮や歪みが生じやすく寸法誤差が出ることがあります。目地込みすることによって、「タイルの味」を損なうことなく寸法誤差を調整するとともに、タイルの直線や曲線を美しく見せることができます。
目地幅の決め方
タイルの目地幅は、主に「寸法許容差」を基準として決められます。寸法許容差とは、日本特有の焼き物らしさのあるタイルを生産するために、JIS規格で認められている寸法誤差のことです。
項目 | 製品寸法 | |||||||
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~50 | 51~105 | 106~155 | 156~235 | 236~305 | 306~455 | 456~605 | ||
長さ及び幅 | ±0.8 | ±1.2 | ±2.0 | ±2.4 | ±2.8 | |||
厚さ | ±0.7 | ±1.2 | ||||||
ばち | ±1.0 | ±1.4 | ±1.6 | ±2.0 | ±2.4 | |||
反り | 面反り | - | ±0.6 | ±0.8 | ±1.0 | ±1.2 | ||
ねじれ | - | ~0.5 | ~1.6 | ~0.8 | ~1.0 | |||
辺反り | - | ±0.6 | ±0.8 | ±1.0 | ±1.2 | |||
側反り | - | ±0.8 | ±1.2 | ±1.6 | ±2.0 | |||
直角性 | - | ±0.8 | ±1.2 | ±2.2 | ±2.4 | |||
役物の角度(°) | 90±1.5 |
※日本工業規格 セラミックタイル(JIS A 5209 2014)より抜粋
例として、150角タイルの目地幅を考えてみましょう。このサイズの寸法許容差は±2.0mmと定められています。タイル二枚分の最大誤差4mmと+アルファを考慮して、5mm目地程度で施工すると、タイルを納まり良く貼り付けることがを可能です。
目地パターン
様々な役割を持つ目地ですが、目地割を工夫することでタイルの見え方を大きく変えることも可能です。ここでは、代表的な目地パターンを紹介いたします。
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通し目地(いも目地)
スタンダードな目地のパターン。タイルの縁に合わせて、一直線に目地を通します。芋の根のように規則正しいラインであることから「いも目地」とも呼ばれます。
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馬踏み目地(破れ目地)
タイルを上下で互い違いに貼り付けるパターン。破れ目地とも呼ばれます。 通し目地と比べ、直線のずれが目立たないため施工がしやすいといった利点があります。
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四半目地
角タイルを斜め45°に貼り付けるパターン。端部に使用するタイルはカット等の加工が必要な場合があります。
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やはず張り(ヘリンボーン)
二丁掛け等のボーダータイルを矢筈模様に貼り付けるパターン。連続したV字型が、魚の骨に似ていることからヘリンボーンとも呼ばれます。
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イギリス張り
主に二丁掛けタイル・小口タイルを貼り付ける際に使用される目地パターン。二丁掛と小口が、一列ごとに交互に並ぶように貼り付けます。
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フランス張り
主に二丁掛けタイル・小口タイルを貼り付ける際に使用される目地パターン。二丁掛と小口を、馬踏み目地のように交互に並ぶように貼り付けます。
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アメリカ張り(フランス型)
主に二丁掛けタイル・小口タイルを貼り付ける際に使用される目地パターン。二丁掛のみの列と、二丁掛と小口が交互に並ぶ列が交互に並ぶように貼り付けます。
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ガーデン網代
やはず張りの変形パターンの一つで、主に西洋風の庭や玄関前のアプローチ等で使用されます。
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フランス網代
やはず張りの変形パターンの一つ。V字に並んで角タイルを貼り付けます。
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バスケット
二枚一組で、隣り合うペアと垂直に貼り付けるパターン。カゴの編み目のように見えることからバスケットと呼ばれます。
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カゴ張り(三つ目市松)
三枚一組のタイルをコの字型に貼り付けるパターン。一列ごとに交互に並ぶように貼り付けます。
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重ね網代
やはず張りの変形パターンの一つで、玄関前のアプローチ等で使用されます。矢印のように伸びる矢筈模様により、視線を誘導できるため、主に直線的な床面に使用されます。
紹介したパターンは、国内外の様々な場所で見ることができますので、タイルを使用した建築物を見かけた際は、どのパターンで貼られているか注目してみてください。
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