役物タイルの可能性

「役物タイル」は、仕上げの美しさを際立たせ、メンテナンス性も向上させる、縁の下の力持ち的存在。今回は、そんな役物タイルにスポットライトを当て、タイルの奥深さを探求します。

役物タイルとは?

一般的な平物タイルでは納まりにくい「開口部」や「隅角部」に使用する、特殊な形状のタイルのことを「役物タイル」と言います。

役物タイルは、生産も施工も手間が掛かりますが、ぴったりと納まった入隅・出隅やコーナーは、美しく均整の取れた空間演出に大きな役割を果たしています。

「神は細部に宿る」と謂われますが、入隅・出隅やコーナーの役物タイルにまで、しっかりと拘っている建物は、ワンランク上の風格・上質感を印象付けることができます。

  • 役物の油圧式プレス用金型(写真左)と、乾式成形で作られた役物タイルの生素地(写真右)。

  • 平物と役物を同時に入れた窯の様子。役物タイルの焼成には、専用の「役物ざや」が必要になります。

役物タイルの種類

外装壁の役物タイル

  • 曲がり

    壁面のコーナー部分に使われる役物タイル。最初からL字型に成形されたもののほか、平物タイルを切断し、接着加工されたものもあります。

  • 屏風曲がり (まぐさ)

    主に入隅や出隅に使われることが多い、長辺側を曲げたL字型断面の役物タイル。

  • 見付

    コーナー部分に使用の際、L字成形より鋭利にならず、安全に収めることができる形状の役物タイル。

内装壁の役物タイル

  • 片面取

    タイルの1辺の側面(コバ)を面取りして角を取ったり、側面に色が付いたりしたタイル。

  • 両面取

    タイルの2辺を面取りし、丸くなっているもの。

  • 竹割 / 三角出隅

    コーナー部分を納める役物タイル。隅を納めるものは「三角出隅」といいます。

  • 幅木

    壁と床との結合部に使われる、タイルの端部をアールに曲げたタイル。

床用の役物タイル

  • 段鼻 (階段タイル)

    階段の踏み面に貼ったタイルに滑り止めの凹凸が入れてあるものや、横から見える側面も面取りや施釉がされたもの。

  • 垂れ付き段鼻タイル

    段鼻タイルの一片が垂れ下がったもの。

時代の変化と、役物タイルの歩み

明治後期頃

イギリスからの影響を受け、ヴィクトリアタイルを手本として、タイルが盛んに作られていた時代です。当時建てられた歴史的建造物の中には、トイレや風呂場だけでなく、玄関スペース、内部の部屋の装飾として、贅沢で華やかな装飾タイルが使われています。

その納まりには、現代では見られなくなってしまった豊富な形状、美しいデザインの役物の数々を見ることができます。

  • 明治45年竣工の旧秋田銀行本店。現在は「赤レンガ郷土館」として使用されています。

  • 明治後期の温泉旅館「越後屋」

大正時代

大正デモクラシーをきっかけに、タイルが日本の民衆の生活に定着し始めた時代。たばこ屋の台座、菓子屋のショーケース、写真館などに、時代の先端を行くハイカラな装飾品として、タイルが使われ始めました。

銭湯や温泉地では、衛生観念の発達に促され、木造だった浴槽や洗い場にタイルを使用するようになり、タイルは一気に庶民の生活に広く普及しました。特に水廻りに適したタイルは、この時代に発展しました。

  • 鮮やかなカラーの役物タイルが印象的な、山形県旧県会議事堂のトイレ。

  • 山形県旧県会議事堂(大正5年竣工)の外観

昭和初期

関東大震災後の復興に伴う建築ブームと都市開発の中で、種類も豊富になったタイルが、内外装ともに需要を高めた時代。当時の地下鉄の駅にはタイルが起用され、近代のモダンなイメージを高めました。

また、この頃から衛生思想の普及により、日本の木造住宅でも、風呂場やトイレなどの水廻りに、タイルを使用することが一般的となりました。

  • 名古屋市役所(昭和8年竣工)には、外装・内装ともに様々な役物タイルが使われています。

  • 多種多様なタイルを用いた、宮城県石巻市にある旧鑑慶丸陶器店(昭和5年竣工)。

デザイン性に富んだ、アメリカの役物タイル

日本では役物形状は、シンプル且つ限られたものになりつつありますが、アメリカでは、今でもデザイン性の高い豊富な役物タイルが数多く存在します。生活を豊かに彩ってくれるタイルは、彼らのライフスタイルに欠かすことのできない身近な建材で、それ故に、今でも尚、高いデザイン性や装飾性が求められています。

デザイン性の高い空間装飾を実現する上で欠かすことのできない、豊富な形状の役物タイルの需要は、アメリカ市場にはまだまだ存在する! 日本のタイルを世界に発信していく上で、今後、豊富な役物形状を生産していくことは、タイル業界にとって、重要な鍵になるかも知れません。

まとめ

いかがでしたか? 役物タイルは、タイルの脇役的な存在で、見過ごされがちですが、美しい空間演出に重要な役割を果たしています。

また、タイル装飾の歴史や、アメリカのタイル文化を見ていると、役物タイルのデザイン性・装飾性の追究には、まだまだ可能性があるように感じられますね。

今後、街中でタイルを見かけたら、是非、入隅・出隅やコーナーの役物タイルにも注目してみてくださいね!

■アンケートフォーム

ブログ記事一覧に戻る